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多様化する新卒採用形態と課題

新卒採用の形態は、近年多様化している。

日本では、高度経済成長期以降「新卒一括採用」をベースにして経済成長を遂げてきた。しかし、経営環境や働く人の価値観が変化していく中で、新卒一括採用の維持が難しいという声が多く聞かれる。

ここでは、新卒採用形態のトレンドを確認した後、採用形態によって生じる課題についても解説する。新卒採用のトレンドや問題点を確認して、採用業務に生かしてほしい。

多様化する新卒採用形態

まずは、新卒採用形態が多様化している様子を確認していこう。紹介する11種類の採用形態を、自社の採用形態と照らし合わせながら確認してほしい。

(1)職種別採用

職種別採用とは、入社後に担当する業務を特定した上で採用する形態だ。高い専門性を持った優秀な学生を獲得するための工夫として用いられることが多い。職種を限定することで、熱意や専門性のある人材を集めることができるだろう。

専門性がある場合、入社後の研修の理解力に長けている可能性が高い。教育コストを抑えられる可能性も高くなるだろう。

なお、職種別採用の対象にする職種を検討する場合には、以下のような点を確認しておくと安心だ。

  • 専門的な知識を必要とする職種(業務)……経理・財務、法律・法務、特定技術・技能 など
  • 勤務形態が通常とは異なる職種(業務)……海外事業 など

また、職種別採用で入社した従業員は、原則としてほかの業務への配置転換はできない。本人の了承が必要で、納得できる理由を基に打診することが求められる。

(2)学校名不問採用

採用選考において出身校名を問わない形態である。一般的に、有名で歴史のある大学の学生は優秀で、新設校や無名の大学の学生は優秀ではない、という先入観がある。しかし、先入観を持って採用選考を進めると、優秀な学生を不採用にし、優秀でない学生を採用してしまう可能性も高い。

そのため、学校名不問採用では「自社の求める人材像」や評価基準を明確に定めることで、学歴に代わる採用基準を設ける。

学校名不問採用のメリットは、以下の通り。

  • 熱意や意欲の高い人材を採用できる
  • 社内外に平等・実力主義という印象を伝えられる
  • 多様な人材が入社することになり、社内の活性化につながる

評価基準については合理的なものであり、採用選考の中で誰もが常に同様に判断できるものにしておく必要がある。そして、基準を採用担当者間で共有しておけばスムーズに採用活動を進めることができる。

(3)第二新卒採用

第二新卒者を新卒者と同様に扱う方法である。第二新卒とは、大学を卒業後に一度就職した会社を数年以内に離職した求職者を指し、20代前半を中心とした若手であることが特徴だ。

厚生労働省は2010年に雇用対策法に基づき「青少年の雇用機会の確保等に関して事業主が適切に対処するための指針」を改正(現在は廃止)。2015年には「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、特定地方公共団体、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針」を新たに策定し、第二新卒採用を積極的に後押ししている。

第二新卒採用のメリットは、以下の通り。

  • 20代前半と若く、柔軟性に富んでいる
  • 社会経験があるため、新卒者と比べミスマッチが起こりにくい
  • 新卒者と比べると、社会人としての常識がある
  • 一定のビジネススキルを備えている
  • 教育コストを削減できる
  • 能力開発の余地が大きい
  • 自社の企業風土に染めることができる

第二新卒採用においては、新卒学生と同じく春のみの採用とする場合は少ない。夏・秋、もしくは年間を通じて採用することも多い。第二新卒採用では、求める人材像が新卒採用よりも明確だろう。その分、採用の間口を広げて採用活動に当たる必要があるといえる。

参考:
青少年の雇用の促進等に関する新たな指針の適用が始まりました!|厚生労働省

(4)海外留学生採用・外国人留学生採用

近年の急速なグローバル化に対応するために、語学に強く国際的なセンスを持った学生を採用したいときに、この方法をとることが多い。この採用には、帰国子女も含む。

海外留学生や帰国子女の場合

海外留学生については、日本の大学と卒業時期が異なるため、複数の採用時期を考慮する必要があるだろう。

■海外留学生の採用方法
  • 通常の春季一括採用に加え、夏季採用、秋季採用を追加して実施する
  • 通年採用を実施する
  • 特別な採用選考枠を設けて実施する

外国人留学生採用の場合

外国人留学生は、少人数の採用からスタートした方がいい。職場内での意思疎通や文化・習慣の違いなどを理解しないまま採用数を広げてしまうと、思わぬトラブルに発展する可能性もある。

それでも。外国人留学生を採用することはメリットが大きい。下記のメリットを求めるのであれば、採用を積極的に推進していきたい。

■外国人留学生採用のメリット
  • 外国語が必要とされる業務に対応できる
  • 外国人ならではの発想を取り入れることができる
  • 職場が活性化(グローバル化)する
  • 周囲の日本人に対して、グローバル対応の意識が高まる

(5)通年採用

新卒採用を年2回以上実施することを指す。4月定期採用は、採用管理の効率性を上げて研修を行いやすくするメリットがある。しかし、海外の大学を卒業した人・就職浪人・第二新卒・外国人留学生などを取りこぼしてしまう可能性が高い。

通年採用を取り入れる場合は、採用時期を検討する必要がある。以下に、採用時期の例を挙げるので、参考にしてほしい。

■採用時期
  • 年2回採用:春(4月)と秋(9月または10月)
  • 年3回採用:春、夏(7月または8月)、秋 or 春、秋、新年(1月)
  • 年間を通して採用:春のほか、一年中いつでも

なお、春採用は国内の大学を卒業する新卒者を、それ以外の採用は就職浪人や留学生などをそれぞれターゲットとすることが多い。

(6)新卒紹介予定派遣

新卒紹介予定派遣とは、社会経験のない新卒者を対象に、派遣会社がビジネススキルなどの研修を行い、企業へ派遣することである。

企業側は、社員として採用することを前提として、最長6ヵ月間受け入れることになる。期間中に、社員としての適性があるかを確かめられるのだ。

採用後のミスマッチを防ぐことができるのがメリットだ。面接などだけでは判断できないことが、派遣社員として働いてもらうことで見えてくる。

なお、新卒紹介予定派遣を利用する場合には、派遣会社との連携が不可欠である。

(7)新卒スカウト(新卒紹介)

企業側から学生にアプローチして、人材を獲得する方法だ。中途採用と同じように、人材紹介会社を介して学生を紹介してもらう。採用したい学生とうまくマッチングした場合には、紹介会社に成功報酬が支払われる仕組みだ。

能動的な学生に対して、企業の規模や知名度に関係なくアプローチできるのが、新卒スカウトのメリットであるといえる。一般的に、新卒スカウトサービスに登録している学生は、ほかの学生と比べて自分で積極的に就職活動を行い、自分のキャリアや将来を能動的に考える学生が多いといわれる。そのため、採用力の高くない新興のベンチャー企業や中小企業などでは、将来的に事業を担うコアとなる人材を、新卒スカウトで採用しようとするケースが増えている。

(8)インターンシップ

インターンシップは、学生が一定期間、会社で仕事を体験する制度だ。インターンシップの形態は多種多様である。期間が1日のみというものもあれば、数週間から数ヵ月単位に及ぶものもある。目的に応じてインターンシップを開催することが大切だといえよう。

以下に、インターンシップの種類を簡単にまとめたので参考にしてほしい。

期間 短期 長期
目的 採用PR 教育(選考)
開催形式 採用直結 魅力発信、自社理解
プログラム内容 セミナー 就労体験
報酬 無給(*交通費は支給) 有給

(9)新卒コンサルティング

新卒コンサルティングは、採用を予定している企業の人事部に対して、外部の企業が採用プロジェクト全体を見渡して総合的にアドバイスするサービスだ。経営方針を意識し、採用戦略の立案から関わってもらえる点がメリットといえるだろう。

(10)新卒採用業務のアウトソーシング

採用業務そのものを外部の会社に委託する。専門の会社に委託することで、専門的な知識やノウハウを用いて採用活動に関わる業務を代わってもらえるのが魅力だ。

一般的に採用活動においてアウトソーシングできる業務には、以下のようなものがある。

■アウトソーシングできる採用業務
  • 応募者データの一元管理(就職サイト経由)
  • 採用ホームページの企画、制作、更新
  • 会社案内の企画、制作、送付
  • 会社説明会の呼び込み、リマインドコール、予約受け付け、運営管理、アンケートの実施・分析
  • 合同会社説明会のブース運営
  • 応募書類の受け付け
  • 筆記試験の実施・判定
  • 適性検査の実施・判定
  • 採用選考管理システムの設計・運用
  • 学生へのメール・メッセージの送信
  • 採用選考(筆記・面接)結果の連絡

(11)オンラインでの採用活動

対面で行っていた採用選考や説明会をオンラインで行う。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、オンラインで企業説明会や面接の一部を行った方も多いのではないだろうか。

オンラインツールを用いるメリットは、新型コロナウイルスの拡大状況に関係なく採用活動を進められることだけではない。遠方の学生がいる場合には、移動の負担を減らすことも可能だ。また、説明会や面接の会場を借りる必要がなくなるため、選考人数が多い場合にはコストの削減にもつながるだろう。

新卒採用の課題

新卒採用の手段が多様化する中で課題も見え始めている。ここでは近年注目を浴びている以下の二つについて課題点を考えていきたい。

  • 通年採用
  • 採用活動のオンライン化

(1)通年採用における課題

通年採用は、経団連が2018年に「採用に関する指針」を廃止したことを受けて注目が集まった採用形態である。今後企業の競争力を高めていくためには通年採用を検討する必要があるが、下記の課題も踏まえて導入を冷静に判断する必要がある。

負担の増加

一番は、採用担当者の負担が増加してしまう点である。春の一括採用でも負担を感じている担当者は多いはずだ。それに加えて秋などにも採用を行うとなると、さらなる負担が予想される。

特に夏ごろには、春採用と秋採用の対応が重なる期間も出てくるだろう。スケジュール管理を含めて、採用担当者の負担を軽減する工夫が必要である。

採用時期を増やせば、その分だけコストが増大することも無視できない。新卒採用で計画に沿って行っていた業務を、通年で何回か行うとすれば、通常の数倍の負担になる。

内定辞退の把握が難しく、採用計画が立てにくい

通年採用では、内定辞退者の人数をすることが難しくなる。特に同業他社などで通年採用が行われている場合は、いつ辞退されるか見通しを立てにくい。通年採用を導入して数年は、具体的な辞退率を予測できるまで、手探りで進めなければならない可能性もある。

採用広報の方法に工夫が必要

通年採用は一括採用と異なり、一斉の情報解禁にはならない。春の一括採用を前提としている大手就職情報サイトは、通年採用の広報手段としては用いにくい。大手就職情報サイトに頼らない広報手段が求められる。

大手企業やネームバリューがある企業であれば、採用広報の問題を抱えることは少ないかもしれない。しかし、中小企業の場合は、積極的に情報発信をしていかないと、学生に認知してもらうのは難しいだろう。前述の新卒スカウトなども検討しながら、多様なチャネルを考えなければいけない。

入社後、一括での研修が難しい

通年採用では、入社後の研修計画が立てにくい。一括採用であれば、一斉に研修ができる。しかし、入社時期がばらばらになれば、その分研修回数も増えることになる。

一年中募集を続ける場合、さらに研修計画が複雑になっていくだろう。

(2)採用活動のオンライン化による課題

新型コロナウイルス感染症への対応で、採用活動はオンライン化を余儀なくされた。収束時期も見えず、今後も強制的なオンライン化が進んでいくと考えられる。採用担当者は下記に挙げる課題を意識し、解消するための手段を考えなければならない。

通信・システムの状況に左右される

オンラインで採用活動を行うと、インターネットやツールの状況に左右されることになる。企業側も応募者側も、インターネットやツールの環境が整っていて初めてオンラインで採用活動ができる。

インターネット環境が悪かったり、ツールに障害が起きてしまったりした場合には、採用スケジュールを後ろにずらさなければならないこともある。最悪の場合、優秀な応募者を逃してしまう可能性もあるだろう。

対策としては、企業側のインターネット環境の充実はもちろん、面接ツールの検討を行うこと、応募者にもなるべく環境を整えるように依頼することが考えられる。

タイムラグで意思疎通がしにくく、表情・身振りが伝わりにくい

面接が途切れない程度に環境を整えても、タイムラグが発生することは避けられない。間合いが取りにくく、意思疎通が難しくなる可能性がある。さらに、表情や身振りなど非言語的な情報が伝わりにくいので、候補者の印象がわかりにくいこともあるだろう。

タイムラグの発生はある程度受け入れた上で、タイムラグを前提としたコミュニケーションのノウハウを身に着ける必要がある。

面接担当者へツールの使い方の研修が必要

面接担当者が、必ずしもオンライン採用で使うツールに詳しいとは限らない。担当者がツールの使い方を学ぶ必要もあるだろう。実際にツールを利用した模擬面接など、研修する時間を確保しなければならない。

会社の雰囲気や働くイメージを伝えにくい

オンラインのやりとりだけで、会社の雰囲気や働くイメージを伝えることは難しい。会社の雰囲気は、実際に従業員と会い、社内の見学をすることでわかることが多い。また就活生にとっては社会人となって働くイメージも湧きにくいだろう。動画などで会社の雰囲気を伝えることはあるかもしれないが、それは応募者がリアルで感じられる情報ではない。

企業風土へのマッチングを重視するなら、十分な感染症対策を施した上で、応募者に来社を依頼することも選択肢に入れておこう。

評価や採用フローの見直しが必要

オンラインで採用を行う場合、面接による評価方法を見直す必要が出てくる。直接会って評価していた項目(例えばビジネスマナーが身についているかどうか)は、オンラインでは評価できないこともある。オンラインで評価できる項目に絞って評価をしなければいけない。

服装など評価しにくい部分はあるが、資料を用いたプレゼンなどはオンラインでも評価しやすいだろう。オンラインツールを使い慣れているかどうかも、今後テレワークを推進していくなら評価に入れたほうがよい。「オンラインだから○○が評価できない」だけではなく「オンラインだからこそ○○が評価できる」と発想を変える必要がある。

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企画・編集:『日本の人事部』編集部

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